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パタンナーズライフ

ドクターコートの運動量

皆さんこんにちは

 

寒くなり、ご自身で作られたコートを着ていらっしゃる生徒さんもちらほらおり、完成度の高さに驚かされます。今月はダッフルコート講習がありました。参加された方で今期の冬物を縫いたいという方は、縫製自体そこまで難しくないので、ぜひ縫ってみてください!

 

それにしてもあっという間に年末ですね、本当に早い一年でした。

 

 

 

公式youtubeにて過去にこちらでも紹介した、ミリタリーについてのパターン、縫製研究が投稿されております。


生徒さんを見ててもミリタリーが好きな方もちらほらいらっしゃるので、現行にはないパターンの考察がとても勉強になりますのでぜひご覧ください!

 

※上の画像をクリックすると動画が視聴できます。

 

 

 

 

今回は機能服のパターンについて考察も含めてご紹介したいと思います。

 

今回このようなジャケットの型を抜いてトワルを組んでみました。

 

 

3面体のドクターコートになりますが、一般的な3面体のコートの形と比べた時にどのようにパターンの形状が異なるのかについて見ていきます。この袖の形について今回は考えてみたいと思います。

 

 

まず、パターンがこちらになります。

 

身頃に関しては一般的な3面体でしたが、鎌底が比較的高めの位置に設定されていました。腕を上げやすくするためではないかと思います。

 

また、ジャケット、コートにしては袖山も低めに設定されています。触ってみた感じだと、いせを多く入れられない生地という理由もありそうです。

 

ここで、医療の現場での動作を考えながら、パターンの動きを考察すると

 

 

・診察、処置、器具操作などの前振り状態

・点滴フック操作、患者の体位変換補助などの腕上げ動作

 

 

が主になりそうです。そのため、一般的な直立・腕自然下垂前提ではなく、前腕挙上を前提に設計したほうが良さそうですね

 

ということもあり、今回のパターンの主な特徴は腕回りにありそうです

 

 

 

背幅もかなり多めにゆとりを取られているために腕がかなり前に振る動きがしやすくなっています。

 

 

 

ただ、今回一番気になったのが、このように前に振り過ぎているために袖が振り戻ってしまっています。

 

パターンを見てみると、身頃で前振りのAHを作っているため、袖自体はそこまで前に振った形状ではありませんでした。

 

 

 

試しに、背幅を削ってみると、このように振り戻しがある程度解消されています。

 

ただ、背幅を削ってしまうと元の運動量が損なわれてしまうので、今回は別の修正を試みようと思います。

 

ここで、袖口部分でひねりを入れることで袖の表情ににどのような変化が起きるのか、確認したいと思います。

 

袖の表情の付け方として、

 

 

・袖山をひねる

・後ろ切り替え線をひねる

 

 

などがあります。これらをすることで、袖にどのような変化が起きるのでしょう。

 

 

①ひねりなしの二枚袖

 


 

②袖山をひねる

 

 

 

「袖山をひねる」については、袖底よりも後ろ側で合わせて袖山を書くことで、袖付け根から前にひねる形状となり袖山周辺の立体感が増してくれます。

 

③袖下でひねる



 

「後ろ切り替え線をひねる」については、後ろ切り替え線の袖口で、外袖と内袖を交差させることで、肘から下にひねりが入り、袖口が内巻きになるような現象が起きます。

 

④袖山、袖下両方ひねる


 

これは②、③を同時に行った場合です。


①②③④の紙を比べてみると、かま底、袖下ともにひねりを組み合わせることでより内巻きに、かつ立体的に仕上がります

 

※右から①→②→③→④

 

 

このように、ひねりを入れることで、袖山が低くても袖口をこのように身頃に近づけることができるうえ、袖全体が立体的になり、メンズなどでよく見られる腕が強調された形状も作ることができます。

 

余談ですが、このような袖の表情の変化は、パターン検定1級の試験においても求められる知識の一つになります。オペラではパターン検定に関する研究も日々行っており、実際に最難関と言われる1級においても高い合格実績があります。

 

過去のブログ『PM検定1級への道のり』にて、具体的な対策内容がまとめられていますので、ぜひそちらもご覧ください!

 

このような袖の修正などは、ラインを変えたらどのような方向にシルエットが変化するのかを分からなければできない修正でもあります。今回以外にも、袖の表情はアイテムによっていくつもあります。その都度身頃に合った袖を作ることができるように、バリエーションをいくつも持っておくとより自由なパターン作成ができるようになります(^^)/

 

 

また、今回の身頃は肩線を大きく後ろに後退させていました。

これに関しても、過去のブログでも古いカバーオールで紹介していますので、過去ブログ『カバーオール2』をぜひチェックしてみてください!

 

 

ブログでは肩線がバイアスで縫い目がないため伸びて肩回りが馴染み、肩先のふくらみを作ってくれるから、と紹介していましたが、医療の分野で考えたときも、かなり納得のいく理由ではないかと思います。多くの方の肩回りになじませるために、肩線を後退させてバイアスの性質を利用しているのではないかと思います。

 

古い洋服で見られる仕様ですが、この辺の形状を採用しているのは凄いですよね( 一一)

 

 

次に仕様に関してですが、仕様自体は比較的簡単で、今回のドクターコートに限らず、主にロック始末で、洗濯をガシガシしてもいいように作られていました。

 

 

他にも、生地はかなり考え込まれていて、通気性、伸縮性、シワになり難さ、吸汗速乾性、ストレッチ性、防透性、静電、抗菌性など、その着用シーンに応じて最適な生地と、洗濯しても劣化しにくい仕様を考えられており、素材にこだわっているものが多い印象でした。

 

 

このように、特定の職業のために作られた今回のドクターコートのように、極端な動作に対応できる洋服を見ることで、ご自身のパターン修正の幅が広がるかと思います。

 

今回の考えを踏まえて、次回実際の袖の不具合を修正をしていこうと思いますので、お楽しみに!

 

 

今回の投稿で年内のパタンナーズライフは最後になります。皆さん今年もお世話になりました。よいお年を!

 

 

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